2013UTMF≪レースレポVol.4≫ [ UTMF]
≪レースレポVol.3からの続き≫
たっぷり休んだもののすっかり体が硬くなり、しばらくは歩きながら体をほぐす。
それでもすぐに登りに差しかかり、もうそこからは登り一辺倒のためじっくり歩く。
ゆっくりではあったが脚は動いてくれていた。
立山、畑尾山、大洞山、楢木山、三国山と縦走するが小さな上り下りの繰り返し。
この区間から走り方を変えてピッチでリズムかるにスタスタと走っているうちに段々調子が良くなってきた感じ。
常に後ろに2~3人を従えて、安定したペースで進んで行けた。
独り言のように話しかけるが、たいして反応もない。
それでも、すぐ近くに人がいるとなんとなく安心する。
今振り返ってみるとなかなかいいトレイルだったのかな。
その時はいくつの山があるか知らなかったので、下りはまだか、まだかと少しイライラしていたら、
あと二つ山があるはずです、と並走していた人が教えてくれた。
やっぱりコースを知っていると走りにも、心にも余裕が持てますね。
試走って大事。地図見とくのも大事。
ついに山中湖が見下ろせるところまできた。
あとは湖まで下る。
下りに差しかかると後ろから勢いのいいお兄さんが何人か下りていく。
元気だったらガンガン下りたいところだが、もうそういう走りは諦めた。
マイペースで脚に負担にならないようそーと下る。
下りきるとまたロードの平坦路。やはりこういう所はへこたれる。
エイドに行くためと諦めてJOG。
A8山中湖きらら到着。121.7km。25時間56分(LAP3時間28分)
しっかり休むつもりだったのに、少し元気になったつもりになっちゃって、20分ほどの休憩で出発。
ここからは石割山、杓子山とコース最難関の山への挑戦となる。
ただし、これらをクリアしさえすれば完走は見えてくる。
石割山へまでは焦らずゆっくりほどんど歩きっぱなし。
石割神社からは予想以上の険しい上り。無理やり作った登山道。
杓子山を前にして、すでにこれかよっ!
石割山山頂はちょうど夕暮れの時間でいいタイミングについた。
石割山山頂から二十曲峠までは下りだけなのだが、だんだん暗くなり始めてきて気分が乗らない。
いよいよ二晩目に突入。ヘッドライトをつける。
遠くにエイドの灯りが見えてくる。暗いと意外と遠くに感じる。
淋しいのでしばらく二人組について下る。
A9二十曲峠到着。127.6km。27時間46分(LAP1時間27分)
ここからは覚悟して上りに掛かる。
石割山から杓子山までは忍野高原トレイルレースで逆走を何度か経験しているのでコース自体は知っている。
杓子山手前の岩場は下りなら、スルスルっと楽しく下れるが、登るとなると容易ではないことは分かっている。
しばらくは走れるが、しだいに急斜面になってくる。
ロープがある岩登りの始まりだ。岩にへばりつくようによじ登る。
幸い前後には何人もいるので足場や手元はほかの人の灯りもあり恐怖も和らぎ助かった。
ある意味こんな夜にこんな岩場を登るなんて楽しいことなのかもしれないが、この状況では楽しむことはさすがに出来なかった。
覚悟はしていたものの予想以上にハードな岩登りとなった。(写真撮る余裕もなし)
杓子山山頂では恒例の鐘を鳴らして、闇夜に轟かせておいたが、写真は暗いのでなし。
ここからはエイドまで下るばかり。
大ボスやっつけたのであとは楽にエイドに行けるかと思っていたが、長い林道の下りで再び睡魔に襲われた。
走れる下りなのに全く体が動かなくなってしまった。
足元はフラフラ。意識は朦朧。ダラダラの歩きが続いてしまった。
どんどん後ろからランナーが駆け抜けていっていたような気がする。
今思い返しても、この時どんなことを考え、何を思っていたのか全く覚えていない。
夢遊病者のようにただただ道を歩き続けていた。それでも歩むことは続けていた。
ようやくループのロード合流地点到着。
ここは去年UTMFの選手を応援したところ。
知っている場所に来て少し元気が出てきた。
エイドまでもあと少しと分かるので、なんとかJOGで頑張ってみる。
ここまで頑張っていてくれたガミちゃんだったが、最後のエイドを前にして、私よりも先にお休みモードになってしまった。
もう、起こしても絶対に起きない爆睡モードだ。
この後は計測もなければ時計もなし。
もう時間も時刻も関係なくなってますので影響ないです。
A10富士小学校到着。142.8km。31時間48分(LAP4時間1分)
最後のエイドまでどうにかたどり着いた。
しかしもうヘロヘロ。うどんを食べながらこれからどうするか考える。いや考える思考力はほとんどなかった。
少し座っていたが、気温はぐんぐん下がってきていて、とてもじっとしていられないので外には長くは居られない。
体育館の中に入るとストーブがあって暖かかった。
ストーブのそばにしゃがみ込むとそこに元気ハツラツな女将さんが声を掛けてくれた。
満身創痍の状態でどのように応対したかよく覚えてないけど、久しぶりに知り合いに会えて元気をもらえた。
私の状態を見て心配してくれて、マッサージを受けられると教えられて、少しでも回復すればと思いやってもらった。
マットが床暖房になっているようで暖かくて気持ちがよく、うつぶせでマッサージが始まるなり完全に落ちた。
終わって声を掛けられて目が覚めた。
どれくらいやってもらったのか尋ねると20分くらいとのこと。
まだ時間大丈夫か聞かれたので、全然大丈夫と答えると、仰向けで再びマッサージ開始。
するとまた、すぐに落ちた。
終わって起こされたが、もう時間は聞くのはやめておいた。知りたくなかった。
再び、這うようにしてストーブのそば移動して横たわったら、そのまますぐに落ちた。
ふっと目を覚ますと体育館の時計は午前0時近かった。
ここに何時に来たのかもよく覚えてなかったので、どれくらい滞在していたのか皆目分からなかった。
しかし、いつまでもここにいるわけにもいかない。気を取り直して立ち上がる。
外に出ると冷え込みはきびしさを増していた。
バックからミッドウェアを取り出して着込む。
ここを出るのはすごく勇気がいった。
たくさんの人で賑わう港から、漆黒の暗闇のなか、冷たい荒波に向かって一人淋しく船出するような心境です。
でも、バックに付けた手バッチに女将さんからパワーを注入してもらい、背中を押してもらうことでなんとか最後の旅に出掛けることが出来た。女将さん有難うございました。
残すはあと一区間。次はゴールに向かうのみ。
どんなにゆっくり歩いても制限時間までにはたっぷり時間はある。
途中、完走できるか心配になった場面もあったが、ここまでくるともうゴールするしかない。いや絶対できる。
辺りにはひとっ子一人いない。前後ともにライトの灯りも全く見えない。
真っ暗闇のなかひとりとぼとぼと歩きながら、完走することを心に誓った。
後半でポールを使えるのはこの区間だけ。
最後の上りも少しだと思いポールを置いてきたのをすごく後悔した。
こどもの国では、最後の最後にこんなに苦しむとは想像していなかった。
この時ポールがあったらどんなにか楽に上れたことか。
と後悔しても始まらない。自力で上るしかない。ゆっくり、ゆっくり、歩きが続く。
やっとのことで舗装路の林道に出ても走り出すことが全く出来ない。
さっきのエイドで少し寝たはずなのに、こういうダラダラ道だとまたすぐに眠くなる。
なんと三度目の睡魔との闘いとなってしまった。
また足元はフラフラ状態。下りはまだか。下りはまだか。そればかり考えていた。
ようやく、林道の下りとなった。
あとはゴールまで下るのみ。
下り始めると、少し元気が出てきた。いや眠気がすこしだけひいた。
よし、もう大丈夫。ゴールはもうすぐそこだ。ついにやった!
再び走り始めると何とか走れる。よ~し、一気に下ろう。
ロードでは抜かれっぱなしだったのに、林道下りでは何人か抜くまでに回復。
ついに河口湖畔まで下りきった。
対岸には大会会場の灯りが見えた。あそこがゴールだ。
湖畔を走っていると、どんどん夜が明けていく。
ガミちゃんが爆睡してしまったので時間が分からなかった。
誘導員の人に時間を尋ねると4時40分くらいとのこと。
よし、5時までにはゴールしよう。
ゴールまで走りきれば十分可能だろう。
最後の力を振り絞って走る。走る。走る。
もう全力疾走なんて必要ない。歩かずに走るだけで十分。
本当なら、ここからは今回のレースを振り返えりながらいろいろ思いを廻らせるところであったが、
もう、完全に思考力ゼロ。走るしかばね状態。
ひたすらゴールを目指すだけで、頭はからっぽ。
早朝ということもあり、残念ながら沿道の人も少ない。それでも何人かとはハイタッチしながらゴール!!
鏑木さんの出迎えはなかったが、そのかわりsallyさん、エディさんが出迎えてくれた。
有難う!!
FINISH八木崎公園161km。37時間47分(LAP4時間38分)
ついに終わった。ついに走りきった。ついにやり遂げた。
最大のチャレンジに俺は打ち勝った。
こんな俺でも100マイル、161kmを走ることが出来た。
苦しいレースは何度か経験しているが、今回の経験は特別だった。
ただ、身体や脚がきついとか痛いとか、そういうことだけで片付けられない、もっと、もっと違う所での闘いだった。
それが何かは、今はうまく表現できない。
100kmと100マイルでは全く次元が違うことも分かった。
実は、ゴールした瞬間には、当初予想してたほどの感動や達成感はありませんでした。
なんとなくゴールゲートをスッーとくぐってしまった感じです。
すでに思考力がなさ過ぎました。同時に感情もどっかに飛んでました。
でも、今思い返せば、やっぱり感動します。充実感でいっぱいで、達成感もものすごいです。
今回のこの結果には大満足しています。自信にもなりました。UTMFを完走したという誇りももてます。
いくつかの課題はありましたが、今の自分にとっての最高の目標はクリアすることができました。
今回、応援していただいたみなさん、本当に有難うございました。
UTMF、STYに参加された皆さん、応援、サポートの皆さん、お疲れ様でした。
大会関係者、ボランティア、地元の皆さん、この大会に関わるすべての皆さん、お世話になりました。そして有難うございました。
来年、今年の課題を解決して再チャレンジするかはまだ白紙です。
どうせ出るんでしょ、という突っ込みの声が聞こえそうですが、今はとにかく完走の喜びをかみしめたいと思います。
眠気対策になにか良い方法が見つかれば出場するかもしれません。
とてもいい経験が出来ました。これからのレースにも活かしていければと思います。
そして、新たな目標を見つけて、再びチャレンジしていきます!!
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素晴らしい!ウルトラやりとげたんですね!!
おめでとうございます!!!!
今朝HNKでウルトラ参加した女性たちを見ながらharleyさんのレポを思いだしました。
harleyもここを通ったんだなぁ・・・と感動してウルウルしてしまいました。
お疲れ様でした・・・ってかもう日常に戻ってお仕事バリバリしてらっしゃるんでしょうね
by 女将♪ (2013-05-08 17:50)
達成した人しか見えないものがありますね!!
とってもかっこいいです!!
by kummy (2013-05-09 16:38)
レース後に湧き上がってくる感動や達成感は、レースを制した者にしか解らないんだろうな。余りにも壮絶過ぎて、想像できないし。これだけのことを成し遂げて、hallyさんは、間違えなくかっこいい。
そして、1つ質問。もう1度、走りたいと思いますか?
by ammysan (2013-05-11 19:28)
スゴイの一言では言い表せない体験ですね。
極限を見極めるという行為、やっぱり恐ろしい…
それに打ち勝つharleyさん、恐ろしい(笑)
とにかくお疲れ様でした!
by mark3 (2013-05-11 19:29)
>女将♪さん
有り難うございます。
私も録画見ました。
いくつかの番組で紹介されてトレランも少しメジャーになれたかな?
これからも頑張ります!
by harley (2013-05-14 16:47)
>kummyさん
私には才能もスピードもないけど、努力と忍耐と諦めない心は持ち続けて
います。
それを評価してもらえると嬉しいです。
by harley (2013-05-14 16:51)
>ammysanさん
今まで参加した大会の中では、過酷なだけあってずば抜けてやり甲斐、達成感はありました。
来年以降については次の
記事にて報告します。
いずれにしても、ammysanさんにも挑戦してもらいたいです。
というか、トレイルランナー皆にも目標にしてもらえたらと思います。
by harley (2013-05-14 17:00)
>mark3さん
私にとっても恐ろしい体験でした(笑)。
でも、お化け屋敷だってジェットコースターだって、怖いの分かっていて、それを楽しんじゃうでしょ?
それと一緒だから。所詮私もみんなと同じですよ。
ただジェットコースターが少し長すぎたかな?
by harley (2013-05-14 17:09)
すごい、のひと言です。疲れさまでした。
それにしても富士山が美しいですね。写真をみて、あらためて
富士山1周されたんだな、としみじみ思いました。
by liang (2013-05-15 07:20)
>liangさん
朝、昼、夕、夜に。
東、西、南、北から。
これだけ色々な表情を見せる富士山をいっぺんに眺められたのは初めてです。
それだけでも貴重な体験でした。
by harley (2013-05-15 13:10)
やはり富士山の写真を見ていると
世界遺産にふさわしいですよね。
by JUN (2013-05-15 22:12)
半世紀生きてると様々な出来事も起きますよね。
今まで通りの元気なお姿での復帰をお待ちしております。
ご家族皆様にもよろしくお伝えください。
by JUN (2013-05-15 22:17)
痴漢の疑い等で拘留されたとしても最大20日間なので、2週間のお休みであるならば、それは大丈夫そうですね笑。
SNSやスマホですっかりユビキタス社会ですが、リフレッシュも大事だと思います。またふらっとお願いしますね。ボクもそんなスタンスなので。
by いかいか (2013-05-17 18:17)
>JUNさん
ついに日本の心が世界遺産ですね。
ますます人気となるでしょうね。
そうね。意識してなかったけど半世紀生きちゃったんですね。
あと半世紀どう生きますかね。
by harley (2013-05-20 09:49)
>いかいかさん
まあ、それとたいして違わない状況です。(笑)
これからもフラフラしていきます。
by harley (2013-05-20 09:52)